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ノウハウゼロからの海外進出

シンガポールにて初の現地法人設立。海外進出に向けた組織づくりの取り組みについて。

ライター
GBIJ編集部
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海外進出のワーキンググループを立ち上げ。全社を巻き込んだ意味とは。

池田:海外進出を始めるにあたって組織体制の変更についてお伺いしたいのですが、今、全社で横軸を通し海外進出のインフラを整えるような組織を新たに作られているのですよね。

川崎:ええ。今は海外進出のワーキンググループを作っている段階です。事業開発部以外の人たちにも海外進出についてもう少し認識を持ってもらいたいのです。「海外進出は四電工の将来に関係する重要なテーマだ」と。経理や企画、他部門の課長を海外のワーキンググループとして作って、今は認知をじわーっと広めようとしています。このままだと海外進出が事業開発部だけの仕事になってしまいますから。

池田:事業開発部の人が出張に行く際の細々した処理などは部署内で取りあえずやってきたけれど、しかし、本来は社内で出張や赴任が決まった場合には、例えば人事や総務まで関係しているんだ、ということを全社に意識付けさせる、ということですね。

川崎:はい、ですから人事や総務も入れていますし、いわゆる出張精算をするような経理部の人間も入れています。そういう関係がある部署の課長には全員入ってもらっていますね。また、社長に頼んでワーキンググループには毎回出席していただいています。

池田:全社を巻き込んで体制を整えるのはまたかなり力が必要ですね。

川崎:はい、海外進出をする事業開発部の担当者の意識を変えることと同様に、他部署に所属する人間の意識を変えていくことは非常に重要なことだと考えています。実は私は四国電力で最初のワシントンDC赴任者だったのですが、ある日突然、「アメリカへ行け」と言われたんです。「すいません、赴任旅費規程とかどうなってますか?」と質問をすると「そういうところから考えるのが今回の仕事だ。」と言われまして。「いつ行くんでしょうか?」と言ったら、「1ヵ月後や」と。会社として初めてのことでもあり、また時代背景もありましたがこれはたいへんでしたね。

池田:御家族も連れて行かれましたからね。それは大変ですよね。

川崎:家族帯同の転勤自体もそれは国内での規定や考え方はありましたけど、海外転勤に関するルールは存在していなかったのです。だから自分で全部を作りました。「私の給料どないして振り込まれるのですか?」と聞くと「経理に相談してみてくれ」、「家賃は?」と聞くと「現地で調べて総務と決めてくれ」という感じでした。ある程度、形になるものが整うのに1年半くらいかかりましたね。昼間はワシントンで仕事をして、時差があるので夜中日本に電話をしながら整えていきました。

池田:それはとてもたいへんでしたね…ワシントンに行かれたのは、いつぐらいの時期でしょうか?

川崎:20年ぐらい前ですかね。ベルリンの壁が崩壊したあたりなので。
ですから、細かな配慮をしないと、ただでさえ行きたがらない人間は絶対に行かないですよね。「全ての制度ができたよ」「バックアップ体制もできているんだ」「何かあったら事業開発部に何でも言っておいでよ」と。そういう雰囲気作りをしておかないと、絶対行かないということは経験から理解していました。

池田:それはある意味、川崎さんの経験が活かされているということですね。そういう経験をしてきたからこそ、海外進出をするメンバーに対して当たり前の体制を整えてあげたいのだ、と。

川崎:そうなんですよ。そういう体制がない状態で「海外に行ってこい」というのは言ってみれば会社として例外的な指示を繰り返しているということになりますからね。先ほども申しましたが、本人たちの気持ちをどう前向きにしていくのかが重要ですから会社側の体制作りは必要不可欠ですね。

池田:なるほど。20年前の川崎さんみたいに本人に丸投げしてやるわけにいかないですからね。

川崎:そうそう。制度をちゃんと作り、社員に認知を広げることで、「ワーキンググループというみなさんの不安を消し、要望を受け入れる場がある」ということを認知させる機会を作っています。海外展開を加速させるために現地の駐在員数を増やしたりしたい気持ちはありますが、組織的なバックアップが出来上がっていない状態でこれを一気に増員すると必ず個人に負荷がかかり崩れてしまう。まずは受け皿を作ることで、「海外に出る体制は整っているよ、安心して働いてきてください」と社員に伝えることができるわけですね。

池田:海外に行って不利になるのが一番かわいそうですからね。ご家族のこともありますし、現地で病気になったら、テロが起きたら、海外にいる間に国内で地震がおきたらどうするんだとか、いろんなことを考え始めると不安は尽きませんよね。会社側である程度、整理整頓して事前に準備してあげることは重要ですよね。

川崎:はい、組織でバックアップができる体制を整えたうえで、担当者個人には海外アレルギーを取り払ってもらう、この両輪が回らないと海外進出は難しいです。ですから今はワーキンググループで例えば、誰がどこに赴任したらどういうことをどの部門が担当して整えていく必要があるか、といった課題を洗い出しているところですね。時間はかかるかもしれませんが、雰囲気作り、制度作りをしっかり行っています。

川崎 博

PROFILE

川崎 博(かわさき ひろし)

慶應義塾大学 経済学部卒。1977年、四国電力(株) 入社後、営業・企画系部門等を歴任。2010年に四国電力(株)徳島支店 支店長室長から四電工(株)理事 事業開発部長に就任。その他、1985年~1987年に日本エネルギー経済研究所(東京)、1989年~1991年に海外電力調査会ワシントン事務所に所属。

池田 仰

PROFILE

池田 仰(いけだ あおぐ)

米国ハワイ州立大学卒業。台湾企業の日本代表を経て、(株)バークレーヴァウチャーズ代表取締役社長、(株)JACリクルートメント執行役員などを歴任。2014年にサイエストに参画。グローバル顧問事業部に所属。