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ノウハウゼロからの海外進出

シンガポールにて初の現地法人設立。海外進出に向けた組織づくりの取り組みについて。

ライター
GBIJ編集部
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 本連載では「海外ビジネスに特化した顧問派遣サービス『グローバル顧問』」をご利用頂いている企業のうち、自社内に海外進出のノウハウがない状態から、海外進出に取り組んだ企業を取り上げ、「ノウハウゼロからの海外進出」と題し、どのような問題に直面し、どのように解決に取り組んだかについて、インタビュー・対談・取材を通じて明らかにする。
 第一回目の対談は2016年5月にシンガポール現地法人を設立した香川県にある株式会社四電工。四国電力グループの一員であり、送配電ネットワーク工事、建設設備の設計・施工などを通じ、四国内の電力供給を担う総合設備企業である。
 電力市場では2016年4月より小売電力の全面自由化が始まり、業界に変動が始まることが想定されている。また、将来的な国内の人口減少に伴う建設市場の縮小も想定されることから、これまで国内市場・地場を中心として事業運営を行っていた株式会社四電工も「収益機会の拡大」を目的とした海外進出に着手した。国内企業であり、その従業員のほとんどが海外事業未経験という中、どのように海外進出について取り組んだのか、理事事業開発部 部長の川崎博氏にその経緯を伺った。

株式会社四電工 川崎部長(以下、川崎)
サイエスト株式会社の池田取締役(以下、池田)

未経験の従業員と始める新規事業。「収益機会の拡大」を目指す事業開発部の設立

池田:2014年の暮れ近くにお電話でお問合せを頂いたのが今回のプロジェクトの始まりであったと記憶しています。そこからシンガポールの現地法人を設立するところまでは我々も協力をさせていただいたのですが、そもそも新規事業を担う事業開発部の立ち上げの経緯から伺わせてください。四電工に事業開発部が出来たのはいつ頃なのでしょうか?

サイエスト株式会社 池田仰 取締役

サイエスト株式会社 池田 仰 取締役

川崎:2011年なので5年前ですね。その当時すでに電力業界の小売の自由化は段階的に始まっていて競争が激しくなることや、国内の人口減少が建設業界に影響を与えることが予測されており、3代前の社長が作成していた中期ビジョンにも「収益機会の拡大」の必要性がうたわれていました。それを受けて出来たのが新規事業による収益機会の拡大を目指す事業開発部でした。

株式会社 四電工 川 崎 博(理事 事業開発部長) ※取材当時の役職。

株式会社 四電工 川崎 博氏(理事 事業開発部長) ※取材当時の役職。

池田:はじめにお話をお伺いした後に、事業開発部の事業としてすでに始まっていたトマトの水耕栽培事業の現場でしたり、メガソーラー事業の現場をご案内いただきましたが、「海外進出」をテーマとして取り組みを始められたのは2014年からですよね。

川崎:元々、私は5年前に赴任して来た時から、海外に行くべきだなと考えていました。ただ、その時は事業開発部としての初めての事業であるトマトの水耕栽培事業やメガソーラー事業の立ち上げ段階だったのでまず事業開発部自体の活動を地に足についたものにするためにそれらの事業にかなり力を入れる必要がありました。海外進出もアイデアとしてはずっと残っていたのですが、ある程度の目処が付き着手できたのがようやく2014年の夏ぐらいでした。

池田:もともと電気設備を扱う会社であったから、トマトの水耕栽培事業などまったく新しい事業を立ち上げる部署をしっかり回していくため組織を立ち上げていくことがかなり大変だったということでしょうか。

川崎:はい、正直「なんて大変な仕事を引き受けてしまったんだ」と思っていましたね。
やはり四電工の社員はみな地元の四国で電気設備に関わることを想定して入社されてきた方々ばかりでしたので、会社として新たな収益機会を作る必要があるので「さあ新規事業だ」と言われても、自分事としてとらえるのはやはりかなり時間のかかることですよね。

池田:そういう背景があったのですね。

(左)ヨンコーアグリファーム 吉野川トマト園の高糖度トマト (右)サンシャインパーク仁尾(香川県)

(左)ヨンコーアグリファーム 吉野川トマト園の高糖度トマト (右)サンシャインパーク仁尾(香川県)

海外アレルギーの壁

池田:我々がご提案を始めて「ではタイを訪問し現地で打ち合わせをしましょう」となったときに、海外出張そのものが初めてということでまた新たな大変な一歩だったのかなという気がしますが、実際いかがでしたか?

川崎:四電工の社員は四国で勤務ができるから、集まっているようなものでしたので、社内の雰囲気作りも必要でしたが、それ以前に本人たちの気持ちをどう高めていくのかが重要だと感じました。海外に出ていく決意をしてもらうためには性急にならず一歩一歩、時間をかける必要があるなと。

池田:少しずつでも、前向きな気持ちにもっていくということですか。

川崎:はい、「パスポートは香川県庁で取ってくるんだ」「バンコク行くのに注射は要らない」「関空経由じゃなくて高松空港から羽田に行く方が早いよ」「切符はどこで買う」などなど細かいフォローをすることが大事だと感じましたね。

池田:結局その後、2名の社員の方に一週間現地へ出向いていただきましたが、社員の方に心境の変化みたいなものはありましたか。

川崎:「海外」というものが自分たちが思っていたほど、遠い存在ではないと認識できたのかな、と感じます。やはり最初は心配しだしたらきりがないですからね、飛行場について何か食べたらすぐに感染するんではないか、なにか事件に巻き込まれたりするんではないか、っていう恐怖感がありますよね。今はもう東京に行く雰囲気と同じように受け取ってきたことが大きい。それからはもう何回か行ってもらっています。いわゆる海外というアレルギーは訪問すればなくなるのでそこはゆっくり経験値を積ませていこうかな、と思っています。

池田:そうですよね、海外に出て行って、いろんなことをやって、ようやくノウハウが溜まってくるんですよね。商談相手にだまされたり、時間に来なかったり。

川崎:そうですね、いろいろとトライ&エラーをしながら、出来る限り経験してもらえばいいと思います。3か月で出来るようなことを1年かけてでも、考えられることを自分で試していくことが必要です。その結果まずは1件10万円くらいの案件を取れるようにする。案件獲得のノウハウが腹に落ちればそれが必ず100万円、1000万円、1億円の案件になるから。これはトマトでもメガソーラーでも海外進出でも同じことです。

池田:今は海外事業進出に関するプレスリリースを出して、プロパーの方がご自身で手配をし、シンガポールに行かれていますね。

川崎:そうですね。ようやく海外に行けるようになりました。

川崎 博

PROFILE

川崎 博(かわさき ひろし)

慶應義塾大学 経済学部卒。1977年、四国電力(株) 入社後、営業・企画系部門等を歴任。2010年に四国電力(株)徳島支店 支店長室長から四電工(株)理事 事業開発部長に就任。その他、1985年~1987年に日本エネルギー経済研究所(東京)、1989年~1991年に海外電力調査会ワシントン事務所に所属。

池田 仰

PROFILE

池田 仰(いけだ あおぐ)

米国ハワイ州立大学卒業。台湾企業の日本代表を経て、(株)バークレーヴァウチャーズ代表取締役社長、(株)JACリクルートメント執行役員などを歴任。2014年にサイエストに参画。グローバル顧問事業部に所属。



上場企業役員OB、グローバル企業のエグゼクティブ出身の
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