Report

ノウハウゼロからの海外進出

創業3年で売上37億円を達成 “洋菓子のスタートアップ”株式会社BAKEは 北海道から世界を目指す

ライター
佐々木正孝
カメラマン
安藤 史紘
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本連載では「海外ビジネスに特化した顧問派遣サービス『グローバル顧問』」をご利用頂いている企業のうち、自社内に海外進出のノウハウがない状態から、海外進出に取り組んだ企業を取り上げ、「ノウハウゼロからの海外進出」と題し、どのような問題に直面し、どのように解決に取り組んだかについて、インタビュー・対談・取材を通じて明らかにする。

ビジネスのグローバル化が進み、企業を取り巻く環境は目覚ましく変化し続ける。スタートアップ企業に求められるのは、市場に対応した迅速な変化と、顧客に本質的な価値を提供し続ける姿勢。つまり、進化と深化である。
株式会社BAKEは、札幌市の老舗洋菓子店「きのとや」の長男として経営に携わっていた長沼真太郎氏が設立。チーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を新宿に立ち上げ、国内12店舗を瞬く間に展開。香港からタイ、韓国、シンガポール、台湾、上海など海外6か国・地域にも9店舗をオープンしている。

注目すべきは、その急激な成長ぶりだ。初年度の売上高1億円から3年目には37億円を達成。4年目になる2016年度は90億円を視野に入れる。ITスタートアップ思考を生かし、猛スピードでグローバル展開し続ける企業体としての「進化」と、店舗で焼いたチーズタルトを焼きたてで提供し、洋菓子本来の美味しさを最大限に考え続ける「深化」――それがBAKEという運動体のストロングポイントだ。躍進するBAKEのブレイクスルーの秘密、そしてグローバル顧問のプレゼンスについて、管理本部 部長の三宅啓司氏に聞いてみよう。

  • ムースのエアリーな食感と、タルト生地のタルト生地のサクサク感のコントラストがたまらない逸品

  • 1ブランド1商品展開。店舗デザインもシンプル。

  • フランスの焼き菓子「クロッカン」とシュークリームを掛けあわせたハイブリッドスイーツ

  • チーズケーキタルト同様、1ブランド1商品展開。

  • 焼きたてカスタードアップルパイ『RINGO』

  • サクサクのパイの食感と、カスタードクリームの量の多さが特徴

  • 商品コンセプトを十分に伝える、ブランド毎統一感のあるデザイン

  • お菓子の美味しさを追求していくために始動したBAKEのR&Dチーム「OPEN LAB」

  • スイーツ×ITを標榜するBAKEを代表するオンラインブランド『PICTCAKE』

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チーズタルトのリアルな美味しさとITスタートアップの思考が見事に融合

洋菓子つくりに採用したABテスト

ふわっとしたムースの食感が口中に広がったかと思うと、サクッとした歯ごたえが心地よい。「BAKE CHEESE TART」の焼きたてチーズタルトは、ムースのエアリーな食感と、タルト生地のサクサク感のコントラストがたまらない逸品だ。全店舗で年間約2000万個を売り上げるという高い商品力。これは、洋菓子をITスタートアップの視点から捉え直すことでもたらされた。

ABテスト(2つ以上のテストページで効果測定をしながら最善のものを選ぶWeb開発の手法)、コ・クリエーション(多様なポジションの人たちと対話しながら新しい価値を持つ製品を開発していくこと)など、長沼氏が掲げるITスタートアップの手法が、ブレイクスルーを生んだのだ。

「老舗が多いのが洋菓子業界の特徴です。既存の会社にないものを打ち出していかなければ、闘うことはできません。そこで、新しいサービスを打ち出すことで、洋菓子をより面白いビジネスに変えていけるのではないかと私たちは考えたのです。

長沼はしっかりとした伝統を持つ洋菓子屋「きのとや」の出身です。小さな頃から慣れ親しんできた洋菓子。「きのとや」では味、品質にもこだわった商品を持っていました。そこに、ちょっとエッセンスを加えて、商品を開発してきました。例えばチーズタルトなら、もともと入っていたブルーベリーを削り、サイズもちょっと小さめに。既存のいいものを、どうしたら今のお客様にさらに喜んでもらえるか。それを考え続けるのが商品開発だと考えています。伝統と、私たちの若さ、フレッシュさ。いいとこどりをして成長していければ、という思いはありますね」(株式会社BAKE管理本部 部長 三宅啓司氏)

商品をブラッシュアップした上、「店舗で焼いて出来たてを提供する」フローを取り入れて、静的だったタルトに「焼きたての香り」「鉄板の上で焼くという視覚効果」という概念をプラスオン。店舗の前に大行列を作った。

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洋菓子屋のバックボーンに裏打ちされた高い技術力で商品を開発していく。とにかく速く市場に出し、ユーザーの反応をフィードバックしながら、随時改善していく。このサイクルは、スピード重視のアプリケーション開発「リーンスタートアップ」そのものだ。

さらに注目すべきは、株式会社BAKE=チーズタルトではない、ということ。多サービス同時展開を標榜するのもITスタートアップのアプローチだ。BAKE創業直後に話題を呼んだ「PICTCAKE」は、ユーザーが撮影した画像をケーキにプリントしオリジナル写真ケーキをオーダーできる新感覚サービス。この他、シュークリーム専門店「クロッカンシューザクザク」、アップルパイ専門店「RINGO」、といったブランドを次々にローンチしている。しかし、どのブランドも提供するのは1商品。ユーザーにとってはブランド=商品が一致しやすく、店舗デザインもシンプルに帰結し、従来型のデコレートされたスイーツショップとは一線を画す。

「Webサイトもそうですが、店舗やパッケージ、商品を含めたデザインも我々の強みの一つです。デザイン性の高さを常に考え、ブラッシュアップし続けていく――それが商品のプレゼンにもつながりますから、今後も突き詰めていきたいですね」

国内の足固めと並行してアジアへ。フットワーク軽く海外を目指す

課題は国ごとに異なる税制対応や、グローバルでの経営管理

BAKEが掲げるのはグローバルへの展開。店舗を広げるのは、国内だけにとどまらなかった。2014年2月に1号店がオープンした「BAKE CHEESE TART」は、何と2015年8月に海外1号店として香港店が始動。国内、海外のマーケットをフラットに捉え、同じクオリティの商品を提供していくグローバル企業の萌芽が、ここにある。

「もともと海外志向が強かった長沼は、創業当時から進出を口にしていました。ただ、十分なリソースがなければ海外展開もできません。具体化したのは、外部パートナーの存在です。創業した2014年の夏ごろ以降、中国や香港、台湾などの企業から『一緒にビジネスをしないか』という引き合いが舞い込むようになりました。

アジア各国は、日本、そして北海道に高いブランド価値を置いてくれます。ここで、北海道にルーツを持つ私たちにアドバンテージがあったのでしょう。そこでブランド価値を最大限に生かすためには、商品のクオリティだけは譲れませんでした。チーズタルトは国内で生産し半製品を輸出、店頭で焼き上げることで、どの国においても同じクオリティ、美味しさで提供することができます。。北海道産のフレッシュな原材料で作ったチーズタルトは、そうそう真似できない美味しさ。決定的なまでの商品力があるのです」(三宅氏)

BAKEは差別化に直結する商品の製造・展開に注力。フランチャイズ・直営の方式には固執せず、たとえば海外初出店となった香港であれば販売は現地のパートナー企業に託している、シンガポールや上海では現地法人を作り、直営で店舗を運営するなど適材適所で行った。この明確な住み分けが海外へのスピード進出に寄与している。ただ、BAKEが課題としていたのが、そのフランチャイズ・直営という経営方式の使い分け、そして各国の税制を踏まえた契約などのエキスパート業務だった。同じアジアといえども、国によって法制度も税制もガラリと変わる。パートナー企業との交渉を円滑に進め、より良いリレーションシップを構築できるかは、海外フランチャイズビジネス、法税制に精通した人材にかかっていた。そこでBAKEはグローバル顧問を活用し、海外事業の経験豊かな顧問を招聘する。

「国ごとに異なる法制、商慣習を踏まえ、ベストな海外展開の形を決めるのは至難の業です。そこで私たちは、グローバル顧問の紹介により、高田稔氏にアドバイザーとして参画していただくことにしました。高田氏は海外展開に関連した法務、税務に精通しており、海外企業との提携、海外子会社の管理へのアドバイスに加えてた、CFO経験が豊富なこともあり、コーポレート部門の体制づくりについてもアドバイスをいただけると考えました」

三宅 啓司

PROFILE

三宅 啓司(みやけ ひろし)

株式会社BAKE 管理本部 部長
大学卒業後、銀行に入社し法人向け融資を担当。
2014年4月に製菓スタートアップである株式会社BAKEへ営業部長として入社。バックオフィス全般を担当しながら新規事業立上げ含む、WEBサービスに携わる。現在は管理本部部長として経理財務、経営企画、法務を統括。

上場企業役員OB、グローバル企業のエグゼクティブ出身の
グローバルビジネスのエキスパートが、
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