Column

OPINION

なぜ、日本のファイナンス、マーケティング、マネジメントは20年間進歩していないのか

ライター
GBIJ編集部
カメラマン
安藤 史紘
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20代を税務署調査官として過ごした高田氏は、29歳でアメリカに渡り、MBA、CPA(米国公認会計士資格)を取得する。ニューヨークのアーンストアンドヤング、シカゴのアーサーアンダーセンなどで国際税務の専門家として従事、2000年、日本に帰国。その後、ジュピターショップチャンネルにて、 財務経営企画本部長(CFO)として新スタジオビル建設、新基幹システム、新倉庫立ち上げ等のプロジェクトを推進、日本初となる365日24時間テレビ生放送を実現、年間売上100億規模から1,000億円にいたる成長基盤の構築を行った。

その後、TSUTAYA USAの代表を務めた後に独立、ロサンゼルスで会計事務所を経営、日米を拠点に、現在はアーンストヤング、ジュピターショップチャンネルにて、海外のビジネスパーソンと働く中で身につけたグローバルスタンダードの経営管理手法を用いて、コンサルタントとして様々な企業の経営課題に取り組んでいる。

コンサルタントとして様々な企業の経営課題と向き合う中、高田氏は、自らが税務署調査官として中小企業を周っていた20年前と現在を比べ、根本的なところで、日本企業のファイナンス、マーケティング、マネジメントは進歩していない、と感じている。

日本国内の人口減少が確実視され、企業の海外進出が国家の重大事項となっている現在、グローバルスタンダードの経営手法の根付かない日本企業に対して警鐘を鳴らす。

帰国後は、”外人部隊”?

2001年ジュピターショップチャンネルに財務経営企画本部長として入社した当時、社長は、アメリカ人であった。日本では、”外人”に雇われる社員、外資系企業のビジネスパーソンは「そういう世界でしか食えないやつら」、と呼ばれていたのである。

最近では、マクドナルドの社長が資生堂、元アップルの社長がマクドナルド、ベネッセと渡り歩くなど、外資系企業出身のいわゆる“プロ経営者”が存在感を増しているが、より現場に近いマネジメント階層については、日本の企業では未だに新卒一括採用からの出世競争という、過去から変わらない流れが続いている。

外資は外資で人材が回っているし、国内企業は国内企業で人材が回っている。
若い人たちの中にはベンチャーや中小企業へ転職するなどといった動きが、少しづつ出ているが、グローバルスンタンダードのマネジメントをきちんと実務で経験してきたマネジメント人材のノウハウは国内企業に還流していない。

時代遅れの武器で戦う日本企業

まず、語られ尽くした話ではあるが、日本国内の人口は減少し、内需は確実に減ってゆく。日本企業の事業運営について、これまで国内に十分な市場があったため、国内事業に向き合っていればよい、という面があった。
ただ、すでに国内人口減少の社会となっているため、事業の維持を考えたときに国内事業だけではじり貧となり、海外進出は必須となる。ここまでは多くの人が認識して、理解していることだ。

総務省|平成28年版 情報通信白書 我が国の人口の推移 図表4-3-2-1をGBJ編集部により加工

※総務省|平成28年版 情報通信白書 我が国の人口の推移 図表4-3-2-1をGBJ編集部により加工

ここで海外市場に目を向けたとき、日本とは反対に、世界の人口は増加を続ける。プライスウォーターハウスクーパースが2015年に発表したレポートの予測によると2050年までに世界のGDPは3倍となり、その中でも中心となる新興国では先進国の2.4倍のGDP規模となると予測されている。

「日本企業のグローバル戦略入門」プレジデント社 p129 IMF,PricewaterhouseCoopers,AAIC分析

※「日本企業のグローバル戦略入門」プレジデント社 p129 IMF,PricewaterhouseCoopers,AAIC分析を参照

そして、日本企業が本当の意味で理解しなくてはならないことは、この新興国市場は既にグローバルスタンダードを武器に戦う企業でひしめき合っている、ということである。

日本企業の海外進出が声高に叫ばれ始めてかなりの年月が過ぎたが、成功しているとは言い難い状況ではないだろうか。

私はその原因を、日本企業だけ、グローバルスタンダードではない、時代遅れの武器で戦っていることだと考えている。私が日本企業のファイナンス、マネジメント、マーケティングが二十年前から変わっていない、と感じる点と、日本企業が海外進出に苦戦する理由がここで交差する。

新卒配属された事業部で、上り詰めた先にある取締役会という、日本独特のキャリアパス

私が感じている懸念事項が、わかりやすく表面化された出来事が二つあった。

まずは世間を賑わせている、東京オリンピックの予算問題である。
この問題のポイントについて、都政改革本部の上山信一特別顧問会見の一文から抜粋しよう。

“問題は3兆円の予算を誰が見るのかということですが、組織委員会は収入がそもそも5000億円であって、3兆円全体に関して責任が持てない。東京都は自分の施設をつくるということになっていますが、残りの分については直接自分でコントロールができない。JOCは実際のオペレーションにはあまり関わらない。日本国政府は警備だとか、実際の人員を出したりということで協力をしますが契約には参加していない。こういう構造ですので、結局全体、トータルを誰が管理するのかということがあまりはっきりしていないと。
 一番上にCoordination committee、調整会議というのがありますが、ここには議長がいない。そしてみんなで話し合いながら決めていくという仕組みになっていますので、結局、実際に現場で作業をする、準備の作業は非常にうまく進んでいますけれども、全体の予算がどうあるべきかということであるとか、あるいは何を優先するのかということについて決める、企業で言うと左の図にあるCEOの役割だとか、あるいはCFOの役割というものがきっちりと決まっていないと。ここにわれわれは危惧を覚えたわけです。”

ここには、東京オリンピックには組織委員会、東京都、IOC、JOCと、4つの会議体があるが、全体の責任の取る役割のCEO、CFOが存在していなかった、ということが記述されている。

本文の中には、通常の企業ではCEO,CFOという役割があるが、東京オリンピックの予算決定組織にはなかった、と書かれているが、日本の企業で起きていることも五十歩百歩であると私は感じている。

オリンピック組織と、企業の意思決定機間の体制比較

オリンピック組織と、企業の意思決定機間の体制比較

事業部が本社機能を凌駕する歪

まずは、東京オリンピックでは会議体が4つあり、それぞれが会議体の利益代表者として、調整会議で話し合いをして決議をする。日本の大企業の取締役会も同じような仕組みで、お金を稼ぐ事業部と、いわゆる本社機能(人事、経理、財務など)、それぞれの利益代表者で形成されている。そしてありがちなパターンとしては、取締役会のトップは、事業軸の中でも、一番勢いのある部門の代表者から選定される。

日本の企業では、新卒からのキャリアを、特定の、多くは新卒で配属された事業部内で過ごすこととなっている。そのため、事業部内での出世競争を上り詰めた、事業部のトップは、取締役会に入った後も、自分の経験している事業の利益代表者としての性格を持ちがちである。その結果、お金を稼ぐ事業部出身のトップが力を持つことがそのまま、全社利益の最大化の観点で議論をする本社機能軸の発言力や権限の抑制につながるのだ。

事業軸の権限が、機能軸の権限を凌駕しているため、全社利益の最大化をマネジメントする仕組みになっていない、という観点から、私は日本の企業のマネジメントも東京オリンピックの組織マネジメントと変わらない、と考えている。

この問題は端的に言えば、意思決定機間のメンバーのキャリアパスの問題である。意思決定機間のメンバーについては、複数事業、複数地域、複数機能のマネジメント経験を持ち、全社利益の最大化について議論のできるキャリアを持った人材を選定することがグローバルスタンダードである。

このキャリアパスの問題については、次記事で詳述するが、端的に言えば、新卒採用から特定の事業内での出世競争を行い、そのゴールとして取締役会が存在する日本企業のキャリアパスが、グローバルスタンダードを理解した“CXO”人材、及び、その予備軍の育成を非常に難しくしている。つまり、日本企業は採用、人材育成に重大な問題を抱えており、その結果として、経営トップとしてマネジメントできる人材の不足が発生しているのである。

高田 稔

PROFILE

高田 稔(たかだ みのる)

20代を税務署調査官として過ごした高田氏は、30歳でアメリカに渡り、MBA、CPA(米国公認会計士資格)を取得する。ニューヨークのアーンストアンドヤング、シカゴのアーサーアンダーセンなどで国際税務、移転価格の専門家として従事、グローバルスタンダードの経営管理を習得、多数の米国日系企業に実践、90年代における日本企業の米国進出を支える。2000年、日本に帰国。その後、ジュピターショップチャンネルにて、 財務経営企画本部長(CFO)として米国流経営マネージメントの実践とインフラ構築で、日本商社と米国企業との合弁企業を成功に導く。現在は、米国に居住、ロサンゼルスで公認会計士事務所を経営し、日本ではスタートアップ、事業開発支援、フランチャイズ管理、グローバル経営管理構築の実行を支援する。

上場企業役員OB、グローバル企業のエグゼクティブ出身の
グローバルビジネスのエキスパートが、
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